早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 応用物理学科 学校案内

社会に役立ち、次の時代を創る、応用物理学

物理学や数学の基礎研究を深めつつ、広く実践・応用・実装する過程において、新しい科学・技術が生み出され、それがさらに基礎物理学の発展を促す――こうした“好循環”を基盤に、応用物理学は産業・経済・社会を支えています。早稲田大学・応用物理学科では、未来のテクノロジーや新しいシステムの基本となる原理や技術を学び、次世代の社会に貢献できる人材の育成に取り組んでいます。

応用物理で未来づくりに挑戦

早稲田大学の応用物理とは?

物理学は自然の基本原理を追究する学問ですが、応用物理学は、物理学を基礎として理学から工学にわたる幅広い分野をカバーし、最新の物理学を最大限に活用して、時代を切り拓く画期的な科学技術を創造する学問です。応用物理学科は創設以来、常識にとらわれない自由な着想と、それを論理的に発展させるという基本的な精神を受け継ぎ、時代の先端を行くために、カリキュラム、研究内容、研究設備など改革を繰り返してきました。卒業生が新規の技術開発に対応できるよう、既成概念にとらわれない自由な発想ができる人材の育成を目指しています。

応用物理学科のカリキュラムの特徴は?

現代のキーテクノロジーの基礎となっている計測・情報工学、光工学、物性物理学、複雑系をはじめとする物理学や現代数学について多くの科目を幅広く学べます。充実した工学系科目が応用物理学科の特徴であり、企業等で不可欠の実践的な研究開発能力を養います。講義は物理学科と連携しており、物理学や数学の基礎をしっかりと修得し、高学年では固体物理、光エレクトロニクス、システム、情報・制御工学など、現代のキーテクノロジーの基礎となっている多くの科目を幅広く学びます。4年次からは希望の研究室で卒業研究を行います。配属可能な研究室は、物理学科と応用物理学科の全研究室が対象となり、幅広い分野を網羅しています。

[工学系レクチャ] 回路理論、Cプログラミング入門、電子工学、計測工学、情報理論、応用確率過程 / [実験演習] 応用物理学ゼミナール、理工学基礎実験、物理学演習、数学演習、応用物理学実験、応用物理学演習 / [基礎科目] 場の数理、波の物理、解析力学、熱力学、常微分方程式、フーリエ解析、複素関数論 / [理学系レクチャ] 電磁気学、量子力学、統計力学、固体物理学、生物物理学、連続体の物理、非線形問題 / 次世代技術新しい物理

卒業後の進路は?

学部卒業生の約8割が毎年大学院へ進学します。修士課程を修了すると約1~2割が、さらに博士課程に進学します。多くの卒業生が、企業や国公立の研究機関、大学などで研究活動を行っています。2022年度は13人の博士が誕生しました。究極の研究者を志すもよし、物理学の基礎を武器に企業で活躍するもよし。いかなる将来ビジョンにも対応が可能です。

学部卒業者の進路 / 大学院進学70% / 就職30%

修士課程修了者の進路 / 就職80% / 博士後期課程進学15% / その他5%

応用物理学科教員からのメッセージ

  • 非線形解析 Nonlinear Analysis

    小池 茂昭 教授
    小池 茂昭教授

    〈専門分野〉非線形偏微分方程式
    粘性解理論
    数理ファイナンス

    日々進化する数学理論を
    様々な方面に応用しよう

    当研究室では、数学理論を用いて様々な現象を表す非線形偏微分方程式を研究しています。扱うのは、物理をはじめとした自然現象だけでなく、ファイナンス等も含みます。本学科では、数理物理学以外に、物性物理学、そして最適制御(現在のAIやロボット研究)があり、極めて幅広い分野をカバーしています。ファイナンスも最適制御理論の一分野です。院生の頃に、最適制御に現れる非線形偏微分方程式を研究テーマにしました。この選択は、応用物理学科で多彩な分野を体感した影響でしょう。本学科には、いくつかの分野に跨った研究をされている先生が何人もいます。これも、本学科の特徴の一つです。当研究室の最近の研究テーマの一つは、多数の分子運動を巨視的に記述する統計力学のアナロジーで、各分子を、経済活動をする人間としたモデルです。そこでは院生の頃に登場し、ずっと研究テーマにしてきた偏微分方程式の新しい解の概念が大いに役に立ちます。研究は、日々変化する「生き物」です。皆さんも、本学科で幅広い研究に触れ、新しい分野を開拓しましょう!

  • 量子光学 Quantum Optics

    青木 隆朗 教授
    青木 隆朗教授

    〈専門分野〉共振器量子電気力学
    量子コンピュータ
    量子ネットワーク

    光の量子性の探究と量子技術の開発

    量子力学によれば、光は古典物理学では説明のつかない様々な不思議な性質を持っていることがわかります。このような光の量子性、および光と物質の量子力学的な相互作用について研究するのが量子光学です。本研究室では、光の量子性を実験室で実際に観測し、また光と物質の量子状態を自在に制御する技術を開発しています。そのための強力な武器が、光を微小な空間に閉じ込めるナノフォトニクスデバイスです。本研究室では、独自の技術で新しいナノフォトニクスデバイスを開発し、フォトニクス技術としての応用を探ると同時に、基礎物理学としての量子光学の研究にこれを適用します。また近年では、量子光学を中心とする量子物理学の基礎研究の成果をもとに、量子コンピュータ、量子通信、量子センサといった量子技術の実用化を目指した応用研究が世界的に進められています。本研究室では、独自に開発した世界で唯一の技術に基づく新方式の量子コンピュータの研究開発を中心に、量子技術の基礎研究から実用化に向けた応用研究までを一貫して進めています。

  • 半導体工学 Semiconductor Engineering

    北 智洋 教授
    北 智洋教授

    〈専門分野〉シリコンフォトニクス
    半導体レーザー
    光集積デバイス

    指先サイズのチップの中で
    光を自在にコントロールする

    最近の光集積回路技術を応用することで、非常に小さな半導体チップの中で光の「強度」や「波長」、「方向」、少し専門的な言葉を使うと「位相」「偏光」などをコントロールすることができるようになってきました。私は光集積回路技術を利用して自動運転自動車などに必要になる1チップのLiDAR(Light detection and ranging)、次世代の無線通信に用いられる超高周波トランシーバの研究をしています。光技術は現在でも光通信をはじめとして様々な所で使われているのですが、技術の発展に伴いその利用範囲は広がっていくと考えています。応用物理学科の良いところは、数学から物性物理、量子光学、半導体デバイス、ロボット、AIやコンピュータグラフィックスなどのソフトウェア技術まで幅広い分野のスペシャリストの先生方が揃っている点にあります。これほど多様な学問分野で構成される学科は、世界的にも少ないと思いますし、やりたいことがすでに見つかっている人も、これから何かを見つけたい人にもお勧めします。

  • 基礎物性 Soft Matter Physics

    多辺 由佳 教授
    多辺 由佳教授

    〈専門分野〉ソフトマター
    液晶
    超薄膜
    非平衡パターン形成

    美しい液晶のパターンに未来技術を見る

    中学生の時に初めて買ってもらった電卓を見て、液晶パネルに興味を持ちました。小さなパネルの中に何が入っていて、どんな仕組みで文字が表示されるのか知りたいと思ったことが、今の液晶の研究につながっています。液体でも固体でもない、その中間状態である液晶。肉眼ではただの液体のように見えるのですが、液晶は光に特殊な性質を与える能力を持っています。液晶研究の面白さとして、わずかな駆動力で光を自在に制御できることや自ら作り出す時空間パターンの規則正しい美しさが挙げられます。表示に用いられるだけでなく、液晶は自然界にも多く存在し、例えば私たちの体の中にも液晶構造を持った組織がたくさんあります。液晶の構造や性質を理解し、制御することができれば、新しいソフトデバイスができると考えています。応用物理学の面白さは、複雑な自然現象をできる限り単純化したモデルで理解し、さらにそのモデルに基づいて新現象の予測やデバイスの考案ができる点です。本学の応用物理学科では、最先端の研究に触れられる各研究室での体験研究が1年時の必修科目になっており、早くから学生同士が切磋琢磨できる環境が整っています。

応用物理学科で学ぶ先輩の声をお届けします

  • 小渕 紗希子 さん
    小渕 紗希子さん

    応用物理学科 3年

    数式を用いて幅広いスケールの
    現象を記述する物理学の魅力

    物理学の魅力は、ミクロからマクロまで幅広いスケールの現象を扱い、数式を用いて未来や過去を探ることができる点にあると思います。高校で物理を学ぶにつれてこの魅力に気付き、より専門的な学びを深めるために本学科へ進学しました。早稲田大学応用物理学科では、基礎研究から応用研究に至るまで多岐にわたる分野の研究が行われており、自分の興味に沿った進路を選択することができます。また、同じ学問を志す友人と切磋琢磨して勉強に励むことができ、日々刺激をもらっています。最初からやりたいことが明確な人は少ないため、時間をかけて自分が楽しいと思えるものを見つけていくことが大事だと思います。将来は大学で学んだ知識を活かし、物理学の魅力を少しでも多くの人に伝えていきたいと考えています。

  • 皆川 遼太郎 さん
    皆川 遼太郎さん

    応用物理学科 4年

    幅広い学びの中で興味の
    方向性が見つかる応用物理学科

    小学生の頃にドラマ「ガリレオ」を見て、そこで数式を駆使して物事を考える物理学者の姿に憧れたのが物理学に興味を抱いたきっかけでした。そこでの漠然とした興味が膨らみ、大学でも物理学を学んでみたいと思い応用物理学科に進みました。応用物理学科の魅力の1つとして学部の3年間で様々な分野を広く学べることが挙げられると思います。私の場合入学時点で、ある特定の分野の「これを学びたい」というものは特になかったのですが、幅広く学んでいく中で自分の興味の方向性を探ることができました。現時点では大学院への進学を考えていて、もう少し自分の興味関心に忠実に学んでみたいと思っています。そしてその経験を人のため社会のために活かせればよいと考えています。

  • 鈴木 琳子 さん
    鈴木 琳子さん

    物理学及
    応用物理学専攻
    修士1年

    理学から工学まで多種多様な
    研究領域をもつ応用物理学科

    高校生の時は理科全般に広く関心がありました。その中から物理を選んだのは、物理学の観点から化学や生物などの現象を研究する分野があることを知り興味を持ったからです。応用物理学科には理学から工学まで多種多様な研究領域が存在し、それぞれに一流の教授、卒業生がいらっしゃいます。専門科目が多く設置されていることも大きな魅力です。自身の興味に合わせて履修を組み授業を受講する中で、どの分野を専門にしたいのかじっくり時間をかけて決めることができました。現在は研究室に配属され、ケミカルロボティクスの研究を行っています。物理学を学ぶきっかけであった化学を交えた研究ができることに充実感を得ています。

  • 草場 竜之介 さん
    草場 竜之介さん

    物理学及
    応用物理学専攻
    博士1年

    自然現象を数学的に
    解明する研究者を目指して

    私は高校生のとき、様々な自然現象を原理的に解明する物理学に魅力を感じ、大学で物理学を専攻しようと決めました。物理学科および応用物理学科には様々な分野の研究者が数多く在籍しており、専門科目では理論物理学や実験物理学、情報工学などを各々の興味に合わせて幅広く学ぶことができます。また、意欲的な学生が多く、同じ志を持つ友人と切磋琢磨できる環境が整っていることも本学科の魅力の一つです。現在私は数理物理学の研究室に所属し、物理学に現れる微分方程式に対して数学的基礎を与える研究を行っています。将来はこれまでに学んだ物理学の知識を生かし、様々な自然現象を数学的に解明できる研究者になることが目標です。