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次世代技術の芽と新しい物理をつくる

早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 物理学科・応用物理学科

部門の紹介

宇宙物理学

理論および実験観測の2 つのアプローチから宇宙における様々な現象を物理学的に理解することを目指す。理論宇宙物理学では,相対論的宇宙物理学,素粒子的宇宙物理学および高エネルギー天体物理学の研究を行う。主に宇宙論的なテーマ(宇宙の創生・進化,宇宙の相転移,インフレーション宇宙論,宇宙構造形成問題,ダークエネルギー)と高エネルギー天体物理学的テーマ(超新星,ブラックホール,中性子星の物理,およびそれらに関連したニュートリノ,重力波現象)の2 つを解析的手法と数値的アプローチの両者を駆使して取り組んでいる。また最近では,ダークエネルギーなど宇宙物理学の観点から重力理論の研究も行っている。

観測宇宙物理学では、すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡などの世界最先端の天文観測装置を駆使して、銀河、巨大ブラックホール天体、原始銀河団、銀河間媒質、宇宙大規模構造などの形成と進化についての研究を行なう。特に、遠方宇宙の観測により、宇宙再電離現象の理解を進め、初代星・初代銀河の形成と進化の解明を目指す。また、太陽系外惑星系の形成と進化に関する研究も行なっている。次世代観測装置であるNASAジェームズウェブ宇宙望遠鏡 (JWST)や、Thirty Meter Telescope (TMT)などの利用を目指した研究も行なっている。さらに、将来の超広視野深宇宙探査衛星計画の立案も行なっている。

市川 幸平(観測宇宙物理学)
井上 昭雄(観測宇宙物理学)
辻川 信二(宇宙物理学・相対論)
MOTZ, Holger(宇宙線物理学)
山田 章一(理論宇宙物理学)

数理物理学

物理学,工学,生物学などにあらわれる数学的諸問題をおもに,解析学,幾何学などによる手法を用いて研究する。特に,関数解析学,発展方程式論,非線形偏微分方程式論,実関数論,変分法に関する基礎知識は重要であり,物理学の基礎知識も必要である。研究の対象となる非線形現象は多岐にわたる。非線形偏微分方程式に限れば,放物型方程式(ナビエ・ストークス方程式,非線形熱方程式),双曲型方程式(非線形クライン・ゴルドン方程式,圧縮性流体方程式),分散型方程式(KdV 型方程式,非線形シュレディンガ一方程式),及びこれらの定常状態を記述する非線形楕円方程式,さらにこれらが複雑に連立した混合型方程式(ザハロフ方程式,デービー・スチュワートソン方程式)などがある。これらの方程式に対して,解の存在,非存在,一意性,多重性,正則性,解析性,特異性,対称性,周期性,概周期性,漸近挙動,安定性などが,その典型的な研究テーマである。

小澤 徹(数理物理学)
小池 茂昭(数理物理学)

原子核・素粒子理論

数理物理当部門では広い意味での原子核の理論的研究と素粒子の理論的研究を行っている。前者では,主に原子核構造を理論的に研究すると共に,その成果を天体物理学等に応用する。原子核構造の研究では,量子力学的多体問題の手法を用いた無限に大きい仮想的な原子核の研究に重点を置く。またそれと関連して,中性子星の内部構造の研究等を行う。後者では,素粒子物理学の理論的研究を行う。この主題と関連して,素粒子の標準理論とそれを超える物理の現象論的研究,重力や超対称性を含む素粒子統一模型の研究を取り入れる。またメゾスコピック系の量子力学,確率過程量子化,量子力学の基礎理論及び観測問題の諸問題の研究を行う。

安倍 博之(素粒子理論)
鷹野 正利(理論核物理学)
中里 弘道(量子力学基礎論)

素粒子・放射線実験

本部門では加速器等を用いての種々の物理及び物質科学,計測に関連した研究を行っている。
本部門には高品質ビーム科学研究,素粒子実験研究,放射線応用物理学研究の3 つの研究指導があり実験的手法により研究を行っている。

高品質ビーム科学研究

高品質ビーム加速器からのビームの応用は自動車用のラジアルタイヤや耐熱電線等の生産など,既に産業界で広く利用されている技術であるが,素粒子物理,計測,医療,半導体産業さらには放射線物理,放射線化学の発展にも欠かせないものである。このような背景のもと,加速器の高度開発,ビーム品質の向上,ビームの高度応用など,加速器本体とその物質科学への応用全般に関する研究を実施している。

素粒子実験研究

素粒子実験研究海外の大型加速器実験(主としてアメリカ,フェルミ国立加速器研究所のTevatron/CDF 実験とスイスにある欧州原子核研究機構のLHC/ATLAS 実験)を用いた国際共同研究を中心に,高エネルギーフロンティアにおける粒子衝突の実験的研究によって,素粒子反応とその内部構造の特性等の研究を進める。これらの実験は素粒子理論を基礎として,その実験を構想し結果を理論と比較検討することで新しい要素を理論にもたらすことや新しい現象を発見することにより,自然の理解をより深めることを目的としている。

現代のコライダー型加速器および検出器の原理,データ収集法,解析手法について詳細に議論する。現代の素粒子物理学実験では,理論の理解から検出,測定原理の正しい知識,統計学を駆使した解析方法をするためのコンピュータ技術まで,幅広い能力が要求される。本部門ではそれらすべての詳細にふれる。特にLHC 実験では人類未到のエネルギースケールの素粒子物理学研究が進められ,新しい扉が開かれることが期待されている。素粒子理論の本質的な理解に加え,海外研究者とともに活発に研究する態度が望まれる。

放射線応用物理学研究

放射線応用物理学可視光から高エネルギーのガンマ線,さらに様々な粒子検出を目的とした放射線検出器開発と,これを用いた実験・観測的研究を一貫して行う。最先端の物理計測は素粒子・宇宙・医療の現場で広く必要とされ,分野の垣根を超えた普遍的技術である。本研究ではスタンフォード大学や宇宙科学研究所との共同研究による衛星・気球実験,加速器ビーム実験への応用,さらには次世代医療装置等への応用研究を行う。

片岡 淳(放射線応用物理学)
寄田 浩平(素粒子実験)

物性理論

物性理論分子・原子・原子核などのミクロスコピックなスケールから,マクロスコピックなスケールに及ぶ物質の構造や諸性質の解明を一貫して行うのが物性物理学である。特に物性理論は,ミクロ,マクロあるいはメゾスケールにわたる典型的な現象の発見と解明,さらにそれに伴う新たな普遍的理論の開拓を進める。そのために,物性現象全般に対する深い理解とともに,量子力学,統計力学さらに近年飛躍的に進歩した数理物理学的手法の修得は欠かせない。また,大規模なコンピューターシミュレーションによって進められる研究は,既存の物質で起きる新しい物性や未知の法則の予言を可能にしつつある。学習面では,個別の研究対象を超えて,物質世界の一般的法則の理解に至る理論的手法を広く学ぶところに目標がある。

部門メンバーによる具体的なテーマは,

1)多粒子系の集団運動や粘弾性物質の変形など,物理・化学・生物系で観られるパターン形成に対する実験的および理論的研究
(2)カオス,工ルゴード性のメカニズム,非線形,非平衡系の統計物理学および理論生物物理学上の諸問題の研究
(3)超伝導・超流動・電荷密度波等の低温多体現象やトンネル効果の理論的研究
(4)ミクロスケールからメゾンスケールにわたって発現する量子力学的効果の追究および量子相関・エンタングルメントを積極的に活用する量子情報・量子技術に関わる物理の研究
(5)量子や波動を舞台とした非線形物理学の理論研究およびそれらを基礎にした先端デバイス応用
(6)磁性体,強誘電体,強相関電子系における創発物性現象およびデバイス機能の理論研究

原山 卓久(非線形物理学)
望月 維人(理論物性物理学)
山崎 義弘(非平衡系物理学)
湯浅 一哉(量子相関物理学)

凝縮系物理学

凝縮系物理本部門においては,現代産業の基幹技術を担っている凝縮系物理学を様々な方向から研究している。これに関連した多彩な講義科目が準備されているのが,この部門の特色である。この中で特に固体物理(格子振動,周期場中の電子,光学的性質と誘電関数,磁性,超伝導,表面・界面)および結晶物理(結晶学の基礎,X 線,電子線,電子顕微鏡,STM,非線形レーザー分光などの物性計測手段)は結晶系物理の基礎であり,これについてしっかりとした知識を身につける。

部門メンバーによる研究テーマは以下のとおりである。

(1)有機材料やカーボンナノチューブを用いた新材料および新物性や新機能素子の研究。特に,
トランジスタ構造を利用した有機レーザー素子やカーボンナノチューブの物性研究など。
(2)電荷やスピンの自由度が結合した物質の開発,および光学測定等を用いた物性の研究。
例として,電荷整列,幾何学的フラストレーション,誘電率の磁場制御など。
(3)強い電子相関を持つ電子系で発現する異常現象の低温トンネル顕微鏡を用いた研究。
例えば高温超伝導や電荷秩序,あるいは付随した本質的不均一性などの物性現象の解明。
低温下,ナノ領域で現れる量子現象の直接観測と新現象の発見。
(4)液晶を中心としたソフトマターの物性実験。系を構成する分子とマクロな静的・動的物性とを
結びつける分子間相互作用の解明と制御。液晶ナノマシーンや擬似生体膜への応用。
(5)赤外~極端紫外領域の超短レーザーパルスの開発と原子や分子・凝縮系の超高速光誘起過程の
解明と制御。特に,物質に関するアト秒領域の波動関数の時間変化の可視化など。
(6)物質の電子構造について,電子間相互作用や電子格子相互作用による相間効果に注目して研究
する。X線や電子線を利用する分光実験によって,多様な機能を示す固体材料の物性を電子
構造の立場から解明する。
(7)固体内部や表面における原子輸送現象や酸化・還元反応などの動的過程の観察と
そのメカニズム解明。単一原子輸送制御などの新しい実験を装置開発も含めて実現していく。

凝縮系物理

勝藤 拓郎(複雑量子物性)
高山 あかり(表面物理学)
多辺 由佳(ソフトマター物理学)
新倉 弘倫(レーザー量子物理学)
長谷川 剛(表面・界面非平衡物理学)
溝川 貴司(電子相関物理学)

生物物理学

生物物理生命現象は,今や高分子とその集合体の性質に基づいて解き明かされようとしている。現代生物学は従来の枠組みを超えて,物理学や化学を基礎とした学問として発展しつつある。研究対象は遺伝子DNA やタンパク質などのミクロなレベル(最近はナノレベルを主要な研究対象としている)から,タンパク質集合体から構成される生物分子機械,細胞とその集合としての生体組織といったマクロなレベルに至るまで多岐に亘り,従って研究方法もまた多彩である。具体的には,様々な生物運動(筋収縮,細胞運動,細胞分裂など),細胞間(内)情報伝達,生体エネルギー変換などの様々な生物機能や生命現象を,それに関与する物質とその性質に基づいて実験的に明らかにする一方,タンパク質の構造形成ダイナミクスや生物機能のメカニズム(分子レベルを含む)を理論的にも解明しようとしている。現代生物学には未開拓の分野が無限に広がっており,如何なる種類(生物好きはもちろん,物理・化学・数学好き)の頭脳にも魅力的な学問となっている。研究のキーワードと研究テーマのいくつかを以下に示す。なお,この部門に関しては生命理工学専攻も参照のこと。

研究のキーワード:

生物振動現象,分子モーター,自己組織化,一分子生理学,回転分子モーター,
たんぱく質分子機械,構造機能相関,揺らぎと応答,分子シミュレーション

研究テーマ:

  • 筋収縮系・細胞分裂系に見られる振動現象の分子メカニズムを解明し,その生物学的意義を追究する。
  • 生物機能における力と熱(温度)の役割(生命現象における物理的因子の役割)を追究する。
  • 分子1 個で働くたんぱく質分子機械の仕掛けを光学顕微鏡下で探る(技術開発も含む)。
  • 分子1 個で働くたんぱく質分子機械の仕掛けを分子動力学計算で探る(技術開発も含む)。
  • 分子機械による化学―力学エネルギー変換の仕組みを解明する。

上田 太郎(生物物理学)
高野 光則(理論生物物理学)
安田 賢二(生物物理学)

情報・物理工学

情報・物理工学情報・物理工学部門は,光学領域と計測制御工学領域からなる。近年の光産業の発展にはめざましいものがあり,レーザー,微細加工,光材料,コンピュータの進歩と相侯って,光の応用分野は像形成・計測から通信・エレクトロニクス・医学・生物・情報処理へと拡大を続けており,新しい応用法の開発も活発に行われている。また,新しい応用と極限をめざす追究が,基礎光学の新しい理論的展開と枠組みづくりを促している。

このような背景をもとに,光学領域では,完成された古典光学の体系を改めて見直しながら,量子光学・統計光学・コヒーレンス論・フーリエ光学,光情報処理,光計測,光学設計,光通信,光コンピュータ,レーザー工学,オプトエレクトロニクス,マイクロオプティクス,非線形光学,イメージサイエンス,X 線光学,医用光学などについて,光に関する基本的な物理現象と新しい応用方法の研究を行っている。

従来から計測と制御は工学の中心課題であったが,コンピュータの発達はこの分野に情報という新しい概念を持ち込み,計測制御工学に電子工学,システム工学,通信工学,および情報工学などを融合した新しい展開を促している。計測制御工学領域では,「光集積回路の設計・試作と多様な応用を扱う光デバイス工学研究」,「超短光パルスレーザを用いた半導体の超高速現象の物理的解明とデバイスヘの応用を研究する半導体デバイス工学研究」,「ロボティックス,神経回路網,画像・音響の処理などを扱う情報工学研究」,「3 次元動画像の生成,処理,モデル化を基礎にしてマルチメディア情報を扱う画像情報処理研究」の4 つの研究指導で,物理学と数学の素養の上に工学的センスを併せ持った,時代の先端を担う研究者とエンジニアの養成が行われている。

青木 隆朗(量子光学)
北 智洋(光デバイス工学)
澤田 秀之(情報・物理工学)
竹内 淳(半導体デバイス工学)
森島 繁生(画像情報処理)

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